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「すみれ セプテンバー・ラブ」の時代
[2026/04/04]

写真は、オールドノリタケすみれ文の双耳花瓶。東京の桜は散り始めたとはいえ、東北の桜はこれからが本番。毎年、この時期の主役は桜ですが今回は桜ではなく、すみれの話。桜とすみれは開花期が同じですが、すみれはあまり話題になりません。
私の大学時代、岩崎宏美の「すみれ色の涙(1981年)」と一風堂の「すみれ セプテンバー・ラブ(1982年)」が流行歌としてヒットしました。その頃、私は美術大学に通ってアート三昧の楽しい日々、まさに人生の春です。大学2年の秋に「すみれ セプテンバー・ラブ」が発売されたのですが、それを聞いた時のことは今でも覚えています。「すみれ セプテンバー・ラブ」はカネボウのすみれ色のリップを秋に売るためのイメージソングです。お洒落な一風堂の土屋昌巳とデザイナーズ・ブランドが相まって「すみれ セプテンバー・ラブ」は時代を代表する曲(TBSベストテンに9週に渡ってランクイン)となります。デザイナーズ・ブランドが全盛で、ワイズにコム・デ・ギャルソン、ビギなど美大の友人たちがお洒落な格好をして大学や町を闊歩していました。
一方、岩崎宏美が歌った「すみれ色の涙」は、ジャッキー吉川とブルー・コメッツが1968年に歌った曲のリバイバル。この曲で岩崎は1981年の日本レコード大賞最優秀歌唱賞を獲得しています。ちなみにその頃はバブル経済の前。まだ、経済優先のバカ騒ぎ感のない、感性や感覚を開放することで自己顕示ができる楽しい時代でした。
ところで、2025年に入ってAI関連の株価や金の価格が上がり、世界は再びバブルの様相を示しています。人々はブランド品に目を向け、光り輝く物を求めています。ビンテージ流行の世相を見ていると、古美術品は満開の桜の下でひっそりと咲いているすみれの花のようです。派手さはないけれど、すみれは可愛いですね。

高さ 約18.5cm/横幅 約14.3cm

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https://www.discogs.com/ja/release/5525796-Ippu-Do-%E4%B8%80%E9%A2%A8%E5%A0%82-%E3%81%99%E3%81%BF%E3%82%8C-September-Love/image/SW1hZ2U6MjgwOTc5ODg=


桜の季節
[2026/03/28]

東京の桜は花盛りです。西荻にある善福寺公園に行くと、あちこちで花見をしています。毎年、花見客の中には飲み友達が何人かいるので「飲んで行け」と声をかけられますが一杯飲むと後が大変、「仕事があるから」とその場を立ち去るようにしています。
写真は江戸時代後期の大和絵画家・田中訥言の山水図。画面の下部に桜の花が描かれた作品です。田中訥言は大和絵画家の系譜に分類されていますが、作品は大和絵というよりも琳派風。この画風に一番近い絵師といえば俵屋宗達でしょう。
この作品が描かれたのは19世紀前半、日本全国で蘭学や清学が流行していた時代です。長崎から流入する新しい文化は日本人の感性を刺激し、伊万里焼でも清学などに影響された多くの作品を製作しています。一方、外国嫌い、攘夷派の京都人は従来からある大和絵を愛でていました。京都でも伊藤若冲など外国文化の影響を受けた画家もいますが、公家たちの好みは大和絵だったようです。
公家好みを簡単に言うと空間に余白があり、曲線的な装飾性が強いということ。直線的な画面構成よりも優しい曲線を用いています。現在でいうと「カワイイ」作品です。「カワイイ」の代表であるポケモンやキティちゃんは曲線で描かれており、京都人に愛された御所人形も丸みを帯びています。
ところで現在、アメリカ、イスラエルとイラクの戦争が長引いています。戦争は劇画チックでシュールな世界観で、「カワイイ」は戦争には似合いません。京都人は平和主義者が多かったので、丸みを帯びた「カワイイ」大和絵を愛していたのでしょう。田中が生きた時代は化政時代で文化が爛熟した平和な時代でした。この絵を見ていると、平和な世界が何かを感じることができます。春ですね。

本紙サイズ 縦横 130.5cm×49.5cm
軸サイズ 縦横 202.5cm×68cm

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桜と流水文の伊万里焼
[2026/03/21]

先週、東京で桜の開花宣言がありました。気温も上がり、花粉症以外の方はこれから春を満喫できそうです。
写真は藍柿右衛門の桜流水文のなます皿。17世紀後期に作られた延宝様式の作品です。延宝様式の作品は伊万里焼の最高峰で、肌合いや呉須の発色、デザインのどれをとっても見事です。20年前は藍柿右衛門の食器は高根の花で、それでも所有したかったので高額を払って買った覚えがあります。
本作には銀直しがあるので安価。直しのある作品は、完品より気軽に普段使いの食器として使えます。傷があっても美しい藍柿右衛門の食器を使うと良い気分になれるでしょう。金継ぎや銀継ぎ直しをして壊れた食器を愛でる日本人の感性は現在、世界中に広がっています。
ちなみに20年前に購入した藍柿右衛門の皿は押し入れの奥深くでひっそり眠っています。今、販売しても購入した頃の金額には到底、及びません。だからと言って、その作品が嫌いになるわけではありません。美しい作品は見ていて気持ちの良いものです。
伊万里焼が高値だったバブル期、日本経済は我が世の春を謳歌していました。写真の藍柿右衛門作品を見ると、あの時代は日本の春だったのかなと感じます。散った桜の花は流水に乗って流れているように見えます。問題があることを「水にながす」というのはいいえて妙。本品を使って食事をすると日常の憂さを忘れることができるかもしれません。

口径 約15cm/高さ 約5cm

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桜と鷲
[2026/03/14]

3月中旬、まだ寒い日もありますが春の訪れを感じることもできます。東京では来週には、桜の開花予想が発表されそうです。
写真は伊万里焼の色絵染付で描かれた桜鷲、雪輪陽刻青海波八寸皿。明治30年前後に作られた八寸皿です。明治時代中期になると日本の近代化も進み、有田地方では会社組織で時代の流行に即した磁器の生産を始めました。本品の特徴を見ると青海波が鍋島焼の写し、海軍を象徴する鷲が桜の中に描かれています。当時の日本は日清戦争で勝利、中でも海軍の活躍は日本人の心を奮いたたせました。
ところで、現在、世界を見渡すと紛争が拡大しています。アメリカのイラン攻撃は日本にも大きな影響を及ぼしています。また、先の選挙で外国人受け入れを制限する政党が躍進しています。これは日本が保守化していることの表れでしょう。そのような人たちは高市総理が推し進める防衛力増強を支持しているようですが、現実的ではない台湾有事の発言などを見ると総理は本当に世界の情勢を理解しているのだろうかと心配になります。
本品が作られた明治時代、軍部には多くの明治維新の戦いを体験した軍人が残っていました。彼らは観念ではなく、実際に戦いを体験した中で物事を発想していました。一方、現在の日本人は震災対策の体験は豊富ですが、戦闘の体験はほとんどありません。
話を古美術に置き換えてみると、骨董収集では体験が鑑識眼を上げる手段です。特に偽物をつかまされた時には失敗を乗り越えた時に目が上がります。私もこれまで何度、痛い目に遭ってきたことか。思いが強い古美術品が出た時は特に要注意。体験から離れて観念だけで行動すると偽物をつかまされてしまいます……。
中東情勢がこれからどうなるかわかりませんが、どのような状況でも体験を通して行動する人は強い。写真の皿を見ながら骨董の真贋を巡って戦って来た体験を思い出しました。

口径 約25.5cm/高さ 約4.2cm

御売約、ありがとうございました

鞠で遊ぶ少女の軸
[2026/03/07]

3月3日(火)はひな祭り。西荻では2月から桃の節句まで「にしおぎひな祭り」が開催されました。去年は日本で初めて女性の高市総理が選出され、これから女性の活躍も拡大しそうです。
写真は、昭和時代に帝展や日展で活躍した日本画家・田中針水(1902年〜1979年)が描いた鞠で遊ぶ少女の軸。かわいらしいおかっぱ頭の少女が鞠で遊ぶ様子が描かれています。この軸を見ていると、様々なことが連想できます。
1つ目は少女の着ぶくれ、2つ目は鞠が象徴している意味、3つ目は少女の後ろに見える虎柄の布です。これらのことを総合して考えると、この軸は虎年の正月のために描かれたのではないかと想像できます。少女が持っている鞠は太陽を表しているのではないでしょうか。
ちなみに、少女の服装を見ると田中がこの絵を描いた寅年は1950年か1962年だと考えられます。この頃、日本にはエアコンもなく、暖房器具といえば火鉢か炬燵くらい。日本人は寒さをしのぐために厚着をしていました。ちなみに1962年はセリーグで阪神が優勝しています。この軸を描いた田中は阪神ファンだったのかなと想像しています。飛躍しすぎでしょうか。
この絵を見ていると、のんびりしていた昭和時代を思い出すことができます。最近、昭和レトロが流行しています。日本人はテクノロジーや過剰な情報に振り回される現代よりも貧乏でも楽しかった昭和時代中期を懐かしがっているのかもしれません。もう一度、子供を大切にしていた時代が来ると良いですね。

軸サイズ 縦横 195cm×51cm

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